Twitterで見かけた愛知医科大学の小論文の課題がなかなか面白いものでした。
強く興味を引かれたので、この小論文課題に挑戦してみることにしました。
※課題・小論文ともブログの見やすさ重視で適宜改行を加えています。
小論文課題:
ある大学生がいました。
この学生が街角の古道具屋でふと買った壺を何気なく触っていたところ、中から壺の精が現れて「何でも願いを一つかなえてあげよう」と言いました。
その学生が100万円欲しいと願った場合、この壺の精は他の人から100万円を盗んで持ってきますし、永遠の寿命が欲しいと言ったら、他の人の寿命を奪ってその学生にあげるというやり方で学生の願いをかなえることになります。
この学生はどんな願いを願うのか、600字以内でストーリーを創作しなさい。
解答:
学生は壺を前にして考え込んだ。
壺の精が願いを叶えてくれるならば、叶えたいことはたくさんあった。
お金はあって困ることはない。美人で優しい彼女が欲しい。高級車も欲しい。海外旅行にも行きたい。就職を考えると、大学の成績だって重要だ。
しかし、本当にこのようなことを願っていいのだろうか、と彼はさらに思考を巡らせる。
もちろんこれらは手に入れるのに時間がかかるし、並外れた努力も必要だ。
だが、このような俗物的な願いは自分の努力で叶えられるではないか。
また、この壺の精は他人のものを奪い自分の願いを叶える存在である。
自分が手に入れるものは、自分の知らない誰かが苦労して手に入れたものや、誰かにとってかけがえのないものだ。
人が苦労して得たものを、自分が横取りすることになるのではないか。
それから、と、学生はなおも思考を巡らせた。
自分が願いを言わなかったなら、この壺の次の持ち主が願いを叶える番になる。
もし自分のかけがえのないものを、この壺の精によって奪われることになったとしたら。
例えばそれが自分の命や、自分の子どもだったとしたら、奪われて平気でいられるだろうか。
そこまで考えて、学生は壺の精を見つめながら、ゆっくりと口を開いた。
「すべての人が、あなたの存在に気づかない世界になってほしい」
気がつくと、壺の精の姿はどこにもなかった。
壺をなでても、もう何も起こらなかった。
学生はその壺を、静かに部屋の片隅においた。